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夏期講習中に取り上げた本ー太宰治『きりぎりす』VS大学受験のための勉強

自習していると思っていたら、自習室で理系の生徒がこの本を読んでいた。
太宰治の『きりぎりす』。
ナイスなチョイスではある。

この作品集は、太宰治中期の作品集である。
中期は太宰が最も乗っていた時期。
芸術家としての矜持と共に、稼げる作家となりつつあり、何かに安定してきた時期の作品で、彼の作品の中では明るいものが多い。戯作的な雰囲気も出て来る。

これらの太宰の作品を、私は大学三回生の夏、思いきり読んだ。
当時、学部の同級生に、太宰が好きな男子がいて、身長も高い彼は、いつも、エラソーに、
ああ、あの作品はね・・・。
と語り出すのである。
それなら・・・、と私もたくさん読んで、夏休み明けに、
あの作品はね・・・。
と言いたくなったのである。

ナルシストな彼だった。
ちょっとこっぱずかしいことも言ってみたりしていた。
誰かの上手な表現をいただいて、それを一緒に歩いているときに不意に言い出して、知らない私たち女学生は、彼のオリジナルだと思って、その表現を、
さすが文学部!
と感心したものだが、後で自分にだけ言っていたわけではないと知り、知ったもの同士で憤慨していた。(笑)

ちょっとおじさんがかっていて、分別くさかった。(笑)
でも、勉強するには良く助けてくれた。

教員になる話があったのに、本屋さんに勤めて、ずっと本と付き合っているようである。

理系に進もうとしているのに、古本屋で買ってきたその『きりぎりす』を彼は、毎日、
返してくれませんか?
と言う。
けど返さない。
取り合えず、数学と物理と英語と国語がしっかり乗るまではスパスタのつもり。
ほんっとひどい教師!

公開:2023/08/09 最終更新:2023/08/09
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